用語解説集

海上運賃の取り決め

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さまざまな海上運賃

海運会社は、さまざまな顧客(荷主)の貨物を扱っており、小口の貨物を運ぶ荷主も、年間に何千トン、何万トンと大量の貨物を運ぶ大口の荷主もいます。大口の貨物の荷主は貨物の数量を背景に、一般の顧客よりも有利な条件(安価な運賃)を求め、また、船会社もこれら大口の荷主を自社に積んでもらおうと運賃の設定を行います。以下に、運賃設定の方式を、海運同盟が全盛であった時代から行なれ、今日では行われなくなってしまったものも含めて紹介します。

二重運賃制(Dual Rate System)

海運同盟加盟船社が運賃表を複数用意し、海運同盟にのみ船積みすることを契約した荷主に対して、契約を結んでいない一般の荷主よりも低廉な運賃を適用することで荷主を優遇する運賃体系です。
荷主が契約に違反して盟外船社を利用した場合は、一定の違約金を支払うか、以後の契約を拒否するなどのペナルティーが課されました。二重運賃制は、特に欧州同盟で利用されていましたが、このような差別的な運賃は独占禁止法に抵触することから、海運同盟に対する同法の適用除外が廃止され、海運同盟が解散・解消した今日では利用されなくなりました。

運賃延戻制(Deferred Rebate System)

運賃延戻制は、ある一定期間に同盟船にのみ積んだ荷主に対して、その支払った運賃の一部を一定期間終了後に割戻金として払い戻す制度です。
対象期間は4ヵ月とすることが多く、例えば、1月から4月まで同盟船社に一手積みした荷主に返戻金が支払われるのは、5月から8月までの4ヵ月も同盟船社への一手積みが確認された9月とするなど強い拘束性がありました。

忠誠割戻制(Fidelity Rebate System)

一定期間すべての貨物を同盟船にのみ積んだ荷主に対して、その期間に同盟船が受け取った運賃を一定の割合でその期間終了後に返還する制度です。運賃延戻制と異なり留保期間(上記の例では、5月から8月までの期間)はなく、返戻金は一定期間終了後自動的に支払われました。これも、独占禁止法に抵触することから利用されなくなりました。

サービスコントラクト(Service Contract=S/C)

荷主が、半年や一年などの一定期間に一定量の貨物を特定の船会社や同盟に積むことを事前に約束し、船社は一般の運賃より低い運賃で貨物を運ぶと同時に、海運会社は、必要なスペースの優先的な提供を確約する契約です。事前に申告した最低量に達しなかった場合はあらかじめ合意しておいた不積み運賃(Dead Freight)を違約金として船会社に支払います。

 

1984年の米国海事法改正により自由な運賃設定を可能にするという目的で制定され、規定の数量を積めば、契約外の船会社に積んでもペナルティーは果たされないなどの緩やかな拘束が荷主に広く受け入れられ、S/Cは海運同盟の解散後も荷主と個別船会社との間で利用されています。

タイムボリュームレート(Time Volume Rate=TVR)

運賃を適用する際に付加される条件で、ある一定期間に、一定量の貨物の船積み、または一定額の運賃を船会社に支払うことを条件に、運賃表に通常より安い運賃を記載するものです。荷主を拘束する手段としては、サービスコントラクト(S/C)に似ていますが、S/Cが特定の船会社などと個別荷主との契約だったのに対し、TVRは、運賃表に記載され、不特定多数の荷主が適用できるところが異なります。最低量に達しなかった場合は、一般の運賃表に記載された運賃が遡及して適用されます。

ボリュームインセンティブプログラム(Volume Incentive Program=VIP)

ある一定期間に、一定量を積むことを条件に(安い)特別運賃を設定しておき、その期間内の船積みには通常の(高い)運賃を適用し、期間終了後または一定量達成後に通常運賃と特定運賃との差額分を荷主に割り戻す制度です。VIPも現在では使用されていません。

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