用語解説集
カボタージュ(外国貨物船の国内輸送)
カボタージュとは
船舶法第3条は、日本籍以外の船舶が、日本各港間で旅客や貨物を運送してはならないと規定しています。このように、陸海空の国内輸送を自国の業者に限定するルールをカボタージュといいます。
背景
カボタージュの歴史は古く、米国では1817年以降今日までカボタージュ政策が採られています。現在わが国では、1952年に制定された内国貨物運送業法が、国内貨物輸送から外国籍船の参入を排除してきました。カボタージュを擁護する有力な意見は、国内輸送の人件費や税制など、コストの異なる外国籍の船舶が参入すると国内運送業の経営を圧迫し、国内輸送そのものが不安定になるというものです。
外航海運業が急速に発展した20世紀になっても、カボタージュはほぼ全ての国々で堅持されましたが、1990年代に入るとEU諸国とオセアニア諸国でカボタージュが廃止または緩和されました。また、わが国においても、規制緩和の流れの中で、カボタージュ見直しの動きがあります。
諸外国の状況
①EU諸国
EUにおいて最初にカボタージュ緩和を唱えたのはイギリスでした。以降域内でのカボタージュの緩和が広がり、1993年には一部の例外を除いて域内のカボタージュは廃止されました。しかし、EU諸国内の措置は、EU加盟国以外の外国船社の参入を認めるものではありません。
②オセアニア
ニュージーランドは1995年に、オーストラリアは1997年に、一定の条件を付けてカボタージュを廃止しました。廃止の理由は外国船社に内航業を解放することで競争を促し、コストを削減するというものでしたが、両国の内航海運業界のみならず、鉄道やトラック業界の経営にも大きな打撃を与えました。
わが国の動向
わが国でも、2000年以降カボタージュ緩和の声が出始めました。主な動きは以下の通りです。
①外航フィーダー網に国内の諸港を含めることで国内の港の活性化を図ろうとする動き
これは東京都、福岡県、沖縄県などの地方自治体が、経済構造特区として港湾の競争力向上を図る動きとなっています。
②外国籍船に内航輸送を開放しようとする動き
わが国内航海運の船員は減少を続けており、少子化の進展から内航海運の就労者確保は難しく、日本人船員を配乗した日本籍船は外国人船員を配乗した外国籍船に比べ、コスト競争力がありません。一方で、需要に目を向けると、物流効率化によるモーダルシフトは今後も進み、内航海運の需要は底堅く推移すると思われることから、船員不足に象徴されるコスト圧縮策として、外国籍船に内航輸送を開放しようというものです。
このような動きに対しては、内航海運業者の反対だけでなく、政府も「外国船の内航海運への参入は国際慣習上諸外国で認めておらず、わが国のみがこれを認めることについては、相手国から代償措置を得ることなく一方的に相手国を利することになり、国益に反する」と否定的な見解を示しています。
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