用語解説集

海上貨物のクレーム処理

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貨物クレームの概要

このページでは、船荷証券(B/L)やSea Waybillで輸送された貨物に運送上毀損や滅失が生じ貨物の価値が減じる、または滅失してしまった場合のクレームについて説明します。

荷主が直接運送人にクレームを起こす場合

事故発見とClaim Notice

輸入した貨物に損傷や滅失などが発見された場合、荷受人は直ちに運送人に対して「貨物が正常な状態で届いていないこと」を記し「Claim Notice」として運送人に通知します。船会社やNVOCCの発行するB/Lには、貨物受け取り後一定期間内にクレームの発生を書面で通知するよう定めており、これを怠ると、貨物は滅失及び損傷がなく引き渡されたものと『推定』されます(国際海上物品運送法第12条2項)。実際には、荷主が貨物を引き取った後直ちに検品し滅失・損傷があったことを立証出来れば、上記の『推定』を覆すことは可能です。しかし、合理的な理由のない通知の遅延は、運送人から反証を妨げられたなどと主張され、クレーム処理の交渉でクレームを起こした者(以下、Claimantと言います)に不利に働くこともあり、遅滞のなくClaim Noticeを発しなければなりません。

 

時効(Time Bar)

Claimantは、Claim Noticeの有無にかかわらず、一定期間内に正式なクレーム(Official Claimと言います)を出さなければ、時効(正式にはTime Bar)によって請求を失います。海上輸送に関するクレームはHague-Visby Ruleでは1年、米国の鉄道輸送は9ヵ月など輸送モードによって異なります。ですから、複合一貫輸送で貨物クレームが発生した場合は、B/L裏面の約款と、ダメージなどが発生したであろう輸送手段におけるTime Barの双方を確認する必要があります。

クレームの処理

Official Claimが提起されると、運送人とClaimantとの間で交渉が行われ、多くのケースは話し合いにより賠償金の額を合意します(和解)。しかし、クレーム金額の大きいものや責任関係が複雑で話し合いでは解決出来ない場合は、訴訟に持ち込まれ法廷で決着を付けます。

 

また、海事関係の専門性が高い審理を行う事案などは、仲裁に付して、輸送人の責任の有無と賠償額を裁定により決めることもあります。

荷主が保険会社の貨物損害保険の填補を受けた場合

荷主は貨物クレーム発生した際、B/L約款に従って船会社やNVOCCに直接クレームを起こすこともありますが(Direct Claim)、通常は荷主が付保した貨物海上保険から填補を受けます。保険金を支払った保険会社は、荷主に代わって保険金として支払った額を上限に運送人に求償します(代位クレーム=Subrogation Claim)。代位クレームでは、保険会社は交渉に先立ち、運送人にSubrogation Letter(元のClaimantは保険金支払い済みにつきこれ以上当該貨物の求償をしないことを証した文書)を提示し運送人と損害賠償の交渉を行います。
貨物保険は「モノに対する保険」であり、貨物に生じた損害に対しては、荷主に速やかに保険金が支払われます。一方、ダイレクトクレームは損害賠償であるという性格から、運送人の過失の程度を確定する必要があります。B/Lの約款などで運送人の責任が制限されているなどの理由により、荷主には多大な手間と時間がかかる割に、受け取る賠償金の額が予想を下回ることが多いので、Claimantは貨物保険から保険金の支払いを受け、運送人は保険者から代位求償を受けるケースが圧倒的に多くなっています。

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