用語解説集

コンテナ船について

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コンテナ船の形態

世界各地にサービスのネットワークが張りめぐらされているコンテナ船による海上輸送は、そのサービスの形態により、特色をもった船型が開発され利用されています。コンテナ船の歴史と種類について見て行きます。

1. 他の船型からの転用

最初に商業目的でコンテナを運んだのは、米国人マルコム・マックリーンで、タンカーの甲板上をコンテナ積載用に改装しまた。マックリーンは翌年コンテナ専用船を就航させ、セルガイドなど今日でも広く使用されているコンテナ船独特の設備や機器を開発・普及させましたが、一般にはあまり普及せず、コンテナによる輸送は特定の航路に限定されていました。

2. 在来船の改良

コンテナ輸送が始まったころの在来船は、甲板上に凹凸が多くハッチカバー(船艙の開口部を覆う鉄製の蓋)の強度も十分でないなど、コンテナの積載には適していませんでした。しかし、コンテナによる輸送が拡大するにつれ、在来船のハッチカバーの強度を増すなどして、より多くのコンテナを積載できるよう改良した多目的船が開発されました。また、コンテナ荷役用のクレーンを装備した在来船も建造され、セミ・コンテナ船と呼ばれる船型も就航しまいた。これらの在来船(多目的船)やセミコン船は改良を重ね今日でも世界中で使用されています。

3. ばら積船の利用

1970年代の後半になると、穀物や鋼材を積載する30,000トンから40,000トンクラスのいわゆるハンディサイズバルカーの船艙を四角くしてコンテナの積載効率を高め、ハッチカバーの強度も増して、ばら積み船としての機能と同時にコンテナの輸送にも転用できるコンテナバルカー(略して、コンバルカー)と呼ばれる船型が開発されました。コンバルカーをフルコンテナ船を比べると、コンバルカーにはセルガイドがなく、積載効率と荷役効率が劣りますが、汎用性が高いので現在も一部の航路で使われています。

4. RO/RO船

フルコンテナ船の時代になっても、世界各地の港にガントリークレーンなどのコンテナを積み下ろしするための荷役設備が整っている訳ではありませんでした。コンテナを積み揚げする機器が整備されていない港では、コンテナを自船のクレーンで吊り上げて荷役をするほかありません。この様な港へは、上記のクレーン付きの多目的船や、RO/RO(Roll on/Roll off)船が配船されます。RO/RO船は船側または艫とも(船尾)にRampという可動式の開口部をもっていて、荷役時にはRampを下ろして本船と岸壁間にコンテナを積んだトレーラーが往来できる傾斜路を確保します。これにより荷役機器がない港でも、トレーラーが船内を自走してコンテナを積み下ろしします。従って、RO/RO船は、LO/LO(Lift on/Lift off)船と比較して積載効率と荷役効率が著しく劣りますが、荷役設備の整わない港湾でもコンテナの積み下ろしが出来るRO/RO船は、その利便性から今日でも一定のニーズがあります。

5. LO/LO船

数千TEUから1万数千TEUに及ぶ数量のコンテナを積む大型コンテナ船は、荷役効率の追求からLO/LO方式を採用しています。大型コンテナ船では、更に荷役効率と積載効率を高めるために従来は余り普及していなかったハッチカバーを装備しない「ハッチカバーレス」方式を採用するコンテナ船もあり、効率追求のための大型化と船型の工夫は今日でも続いています。

コンテナ船事業の合理化

コンテナ船が就航した当初の海運会社は、コンテナ船に対する投資に加え、コンテナユニットを多数用意しなくてはならず、また、港湾設備の整備のために直接的・間接的に巨額な投資が必要となるなど重い負担を強いられました。その一方で、天候に左右されない荷役の実現などで、定時運航率が飛躍的に向上し、スケジュールの順守など顧客のニーズは高度化し、高性能な船隊の整備を求められるなど資金的な負担は益々大きくなりました。以下に、サービスの維持向上のために海運会社が採ってきた運営方針について見て行きます。

スペースチャーター

スペースチャーターとは、特定の航路において、複数の船会社が相互に船舶を提供し、各船社は自社が提供したスペースの大きさの割合に応じて各船に同じ割合で使用スペースを割当て、共同のスケジュールに従って各船舶を運航する共同運営方式です。

 

例えば、A社が積載量4,400TEUのコンテナ船を5隻、B社が4,000TEUの船を3隻、C社が6,000TEUの船を1隻提供し、9隻のコンテナ船で1航海63日の欧州航路を運営するとします。この場合、A社の提供したスペースは全スペースに対して55%、B社は30%を、C社は15%で、各社は各船にこの割合でスペースを割り振られます。つまり、C社はA社の提供した4,400TEUの船には660TEU、B社の船には600TEU、C社の船には900TEUのスペースの割当てを受けます。C社から見ると、僅か1隻のコンテナ船を投入するだけで定曜日サービスを提供できるという仕組みです。

 

日本で初めて北米航路にフルコンテナ船が投入された際は、日本郵船・昭和海運・マトソン(米国)の3社によるスペースチャーター方式が採用されました。

スロットチャーター

スロットチャーターとは、ある船会社が他社の運航する船舶のスペース(スロット)を買い取り、自社の貨物を積むことです。自社貨物の量が自社の保有する船舶(スペース)では足りないとき、または、自社の貨物量が少なく、スペースチャーター方式による共同運航をすることもできないなど、専ら期間を区切って採用される他社サービスの利用方式です。

アライアンス(Alliance)

スペースチャーターが、日本-カリフォルニア航路など特定の航路を対象とした「狭い」共同運航であるのに対し、アライアンスは、複数の航路を包含する「大規模な」共同運航です。各社はスペースチャーター方式同様に自社のコンテナ船をアライアンスに提供し、提供したスペースに占める割合に応じてアライアンスに投入された船舶全てに自社のスペースを確保します。

 

1990年代から2000年にかけて、太平洋航路、欧州航路、大西洋航路など主要航路においてスペースチャーター方式からアライアンス方式に切り替わりました。その主な理由は、効率化と輸送量の増大に応じるために各社はコンテナ船の大型化を進めたため、従来以上に大型化したコンテナ船や港湾設備を整備し、多頻度できめ細かい配船パターンを維持することが難しくなったことや、1990年代から徐々に進んだ海運同盟の解散などにより、運賃の低下が船社経営を襲ったことでさらなる合理化が必要になったことなどが挙げられます。つまり、費用削減とサービスの充実を両立させるには、広範囲な提携であるアライアンスへの参加がもっとも現実的な選択肢だったと考えられます。

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