用語解説集

欧州内陸輸送

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欧州大陸は、北は北海・バルト海などに面し、南は地中海・アドリア海・黒海に面した広大な大陸であり、古くから内陸の輸送網が発達していました。輸送手段も陸路(トラック・鉄道など)・水路(河川利用)・空路(航空輸送)と、地域に適した様々な形態が独自に発達してきました。

 

ギリシャ・アイルランド・イギリスを含むいわゆるEU15カ国を見ると、海上輸送を除くヨーロッパ域内輸送は、トラック輸送が全輸送量の70%以上を占め、鉄道輸送が20%前後、河川輸送が10%以下となっており、欧州大陸内の輸送はトラックに大きく依存しています。二酸化炭素の排出量削減など環境問題へ取り組まねばならない今日、より環境負荷の少ない鉄道輸送や河川輸送へのモーダルシフトが叫ばれていますが、順調に転換が進んでいるとは言えません。

 

以下に各々の輸送モードについて見てゆきます。

水路(河川)

ヨーロッパにはアルプス山脈を源流とする長大な河川が幾本もありますが、その中心はロッテルダム港(ライン川)やアントワープ港(スヘルデ川)、ハンブルグ港(エルベ川・オーデル川)です。EU15カ国の河川輸送に占めるドイツ・オランダ・ベルギー3国の割合は全体の9割を占めています。つまり欧州では多くの河川が貨物運送に利用されているものの、量的にはごく一部の地域と河川に集中しています。

 

水路を利用する貨物は、20世紀の中頃までは、鉄鉱石などのばら積み貨物や重量物など、長距離を陸上で運ぶには適さないものが中心でした。しかし近年は、ロッテルダム港やアントワープ港向けの河川を利用したコンテナの輸送が増加しています。これは、上流にドイツやスイスの大都市を抱え、消費財の輸送が増大したことが大きな要因です。

鉄道

1990年代後半より、二酸化炭素の排出量削減など地球環境保全の観点から、化石燃料である石油を消費する輸送手段に代わって、鉄道の利用が見直されています。欧州大陸には古くから鉄道網があり、貨物の輸送にも供されてきましたが、単線区間が多く、国や地域により軌道の幅が異なるなど、インフラとしての鉄道網の整備は遅れ、輸送量においてトラック輸送に大きく水をあけられています。

 

ドイツやフランスなど欧州における鉄道業は、一般に設備を保有管理する会社と、鉄道を運行する会社が分離している上下分離方式を採用しています。また、各鉄道会社は多くの国と国境を接していることから生じるカボタージュの問題が域内の自由な鉄道網の構築の障害になっています。しかしEUの積極的な政策もあり、鉄道輸送は、トラック輸送や河川輸送など他の輸送手段と組み合わせた複合一貫輸送の核と位置付けられ、今後ネットワークが充実し、輸送量も伸張するものと期待されています。

トラック

先に述べたように、欧州域内における貨物輸送の中心はトラックで、高速道路網の整備により比較的長距離の輸送にもトラック輸送が利用されています。特にコンテナの輸送においてはその利便性から各港から内陸に向けて多くの貨物がトラックで輸送されています。しかし、トラック輸送についてもカボタージュによる規制は残っており、今日でも原則として自国以外での輸送は7日以内に限られ、通過国における貨物の積み卸しの回数に一定の制限を加えるなど、各国は自国のトラック業者を保護する規制を残しており、完全に自由なネットワークではありません。

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