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共同海損とは

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共同海損(General Average=G/A)とは

共同海損(以下、G/Aと言います)とは、海上輸送において座礁・衝突・船火事などの事故が発生し、船や貨物を救う為に船長や船舶の運航者が意図的に犠牲を払った場合、払った犠牲を助かった船舶や貨物の所有者で負担する仕組みです。

G/Aの原理

例に沿って説明します。

 

船舶が荒天に遭遇しエンジン不調となり、このままでは荒波によって転覆・沈没する危機が迫っているとします。この状況で船長が、このまま漂流するより近くにある砂浜に船を座礁させた方が、船舶が助かる可能性が高いと判断し、意図的に砂浜に自船を挫傷させ嵐の過ぎるのを待ちました。幸い座礁させたことで船が安定し、無事嵐をやり過ごすことが出来ました。

 

この後の処理をG/Aという方法で行います。

 

本船を離礁させるには、タグポートを手配するなどの費用がかかります。また、離礁のため船体を軽くする目的で、本船に積んでいる荷物を一部仮陸揚げすることも必要で、その費用もかかりました。また、船体も一部傷ついたのでその修理も必要です。これらは、本船及び本船に搭載されている貨物、燃料油、水、備品などを救うために意図的に発生した費用です。G/Aの最も基本的な考え方は、払った犠牲と、助かった全てのもの(船体、貨物、燃料油など)を金額で表し、各々の損害を免れた財産で按分して費用を負担(分担)するものです。

 

例えば、貨物の価額が10億円、船体や燃料などのその他の損害を免れた財貨の価額の合計が90億で、一方犠牲となったもの、費用として支出したものの合計が5億円だったとすると、貨物の所有者全体が負担すべき分担金は、5千万円(=5億円x[10億円÷(10億円+90億円)]となります。

G/Aの実際

G/Aには多くの利害関係者がかかわるので、迅速に処理をするために「ヨーク・アントワープルール」(以下、「ルール」と言います)という国際ルールに従って処理します。G/Aが宣言された際にこのルールに従う旨は、運送人の発行するB/Lに記載されています。

 

以下では、G/Aの流れを貨物の荷主の立場で説明します。

 

まず、その船舶の所有者によってG/Aが宣言されます。共同海損が宣言されると、精算業務を行う共同海損精算人(Adjuster、以下「精算人」と言います)が指名されます。精算人は海難の概要と、発生した損害を金額に換算し、ルールに従ってG/Aの対象となる範囲を決定します。ルールでは、その精算にかかわる関係者が同意すれば、例えば多くの荷主が絡んだコンテナ船で犠牲損害が少額のG/Aが発生した場合、貨物の所有者である荷主をG/Aの対象から除外して精算することもできます。このような方式を略式G/A(Small G/A)とよびます。

 

G/Aの範囲が決まったら、船舶所有者または精算人は、G/Aに加わることとなった関係者に①Average Bond(共同海損確約書)=荷主が共同海損に同意することを記した書類②Valuation Form(価格申告書)=貨物の価額を申告する書類③Letter of Guarantee(保険会社の保証状)=荷主が支払うべき分担金を保険会社が支払うことを明記した書類などを提出するよう求めます。なお、通常のG/Aでは最終精算まで2~3年かかることもありますから、貨物の所有者(多くの場合荷受人)は、貨物の引き取リのために、精算人に貨物の価額(通常はFOB価額の110%など)相当額の保証状(Bank L/G)または、付保している保険会社の保証状(Letter of Guarantee=L/G)にCommercial Invoiceを提出して貨物の引き渡しを受けます。そして、全ての集計が終わると共同海損分担金を記した共同海損精算書が作成され、残余財産の所有者が分担金を支払って共同海損の精算は完了します。

この共同海損は海上輸送独特の論理、即ち海上輸送そのものが輸送人と荷主の共同の冒険という考え方に基づいています。ただし、荷主にとってみると、荷物の到着は遅れ、場合によっては揚げ地が勝手に変更されてそこで輸送が打ち切られる場合などもあり、その上分担金を支払うという理解しにくい仕組みでもあります。

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