用語解説集

P&I保険

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P&I保険とは

P&I保険(Protection and Indemnity:船主責任保険)とは、船舶の所有者や運航者が、所有・運航・管理に関連して第三者に対する賠償責任を負った際、その損失を填補する保険の一種です。

 

P&I保険の運営主体は、営利を目的としない保険組合で、船主や船舶の運航者などの運送人が資金を拠出してClub(組合)を運営しています。世界的規模で活動するP&I Clubは現在13ほどあり、わが国には日本船主責任相互保険組合(Japan P&I)があります。

P&I保険と貨物海上保険

P&I保険の主な対象は、油濁、岸壁衝突(岸壁の修理)、船員の死亡や負傷、難破に伴う船骸除去などもっぱら船舶の所有者または船員の雇い主として負う責任(Protection)と、積み荷の運送人として負う運送契約上の賠償責任(Indemnity)の2つに大別されます。

 

以下に、船舶の所有者や運航者が積み荷に対して負う賠償責任保険と、荷主が付保する貨物海上保険の関係について説明します。

 

例えば、輸入したコンテナ貨物に水濡れが発見された場合を考えてみます。
この様な場合、受荷主は、貨物保険の保険者即ち自身が付保した海上保険会社に損害の補償を求めることも(保険求償)、運送人である船会社に対し直接損害の賠償を求めること(ダイレクトクレーム)もできます。どちらも同じように見えますが、荷主にとっては大きな違いがあります。
保険会社に保険求償をした場合は、原則として損害を被った額が保険金として支払われます。壊れたものの価値に対して保険が付保されているので、貨物が損傷したという事実があれば保険金が支払われます。
一方、船会社などの運送人に直接クレームを提起した場合は、運送人は「自らの責任の範囲内」で賠償に応じます。「自らの責任の範囲内」とは、船荷証券等の輸送約款に記載された範囲であり、いわゆるPackage Limitationの規定などにより予想外に低廉な賠償額にとどまる可能性があることを示唆します。荷主の立場から比較すると、貨物保険会社への求償では、被った実損害が概ね填補されますが、運送人へのダイレクトクレームは、賠償責任の追求という性格から、荷主に厳格な立証責任が求められると同時に、賠償額についても運送人に有利な船荷証券の条項などにより保険金支払額より低く抑えられてしまう可能性があります。

 

何れにしても大手コンテナ船運航会社(実運送人)は、直接荷主からクレームを受け、または保険会社などから代位求償権をもとに賠償を求められる場合も、賠償金を支払う場合は、自らが加盟するP&IクラブのIndemnityの部分より填補を受けるのが一般的です。
つまり、荷主やNVOCCが貨物保険会社に保険を付保しているのに対し、実運送人は一般にP&I 保険で貨物クレームを処理をします。その理由は、P&I保険の方が料率は低いという理由もありますが、P&I保険のネットワークは概ね全世界をカバーしており、貨物クレームが専ら揚げ地で提起されることから、P&Iに貨物保険の処理を委託すれば、世界の何処でクレームが提起されても均一な対応が期待できるということも重要な要素と考えられます。

 

P&Iクラブは、貨物保険以外にも多くの保険を会員に提供しており、各P&I Clubは「国際グループ」を構成しています。国際グループの主な役割は、保険をプールし運営することにあります。保険プールでは、加盟Club間でリスクを分担する方法を取り決めており、各Clubの保有限度額を超えるクレーム(2011年度は8百万ドル)を互いに分担する仕組みとなっています。
そして5千万ドルを超え20億5千万ドルまでのクレームに対しては、自動的に保険市場の再保険契約を結んで、プールの健全な運営を図っています。

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